MIAにおける「企業の生々流転」
「企業は生きている!」とムーチョは言いました。「生き物は決して同じ状態にとどまることは出来ない。生きるということは、常に生々流転していのだ。この発想が我々の企業目標を明確にしてくれるのだ。プログラムに企業の生々流転を取り入れよう・・・」、これも小野さんの提案でした。
万物は生々流転している。生まれ、育ち、発展して、やがて成熟し、衰退し、消滅していく。これは宇宙規模でも確認されていることで、この宿命から逃れることは出来ません。
今の宇宙は、ほぼ136億年前、ビックバンという大爆発から生まれたと言われています。地球は46億年前に誕生し、その〈水の惑星〉は生命を誕生させ、長い進化の末、多様な生命に溢れる星となりました。そして、今から10億年後には、太陽の膨張によって地球上の水は蒸発し、高温のために雨として還ることが出来ずに、不毛の星になってしまうことが科学者によって計算されているのだそうです。
まあ、こんな宇宙規模のことをいう前にも、企業の30年説、あるいは50年説などといって、一つの企業形態は永遠に続かないことが経営の常識になっています。企業活動は社会に大きな変化をもたらし、その変化によってその企業の環境も常に変化してしまうという厄介な社会に私たちは生きているのです。また、企業内でも常に矛盾を蓄積するようになっています。人間が企業をつくっているからでしょう。
だから、いつまでも同じことを求めずに、常に社会の変化や企業の状況に合わせて、自らを変革していかなければならないのです。
さて、いったい企業はどんな生々流転をしているのでしょうか?
MIAでは、企業の生々流転を5つの期に分けています。
〈創生期〉、〈発展期〉、〈成熟期〉、〈衰退期〉、〈再生期〉、の5つです。
それぞれの期には特徴的なパターンがあり、いずれの期にも、そのまま留まることは出来ず、常に変化していくという宿命にあります。
現実の企業には、これらの特徴的なパターンは混在していて、創生期にありながら発展期のパターンも入っているし、衰退期型のパターンさえ見受けられるのが一般的です。これはそのこと自体が問題ということではなく、現実の多様性を表しているに過ぎません。
では、各期の特徴的なパターンを見てみましょう。
【 創生期 】
文字通り、企業は必ず〈創生期〉からスタートします。
一人、または数人の創業者が企業を興し、活動をはじめます。創業時にはないものづくしの状態が普通です。資金力も不足、商品も未開発、信用もないし、良い社員もいません。あるのは、燃えるような情熱だけ、という状態なのです。そして、創業者は文字通り不眠不休の企業活動を行い、やがて少しずつ仕事も増え、社員も増強されて、 商品のラインアップも揃い、それにつれて信用もついてきます。
創生期のまま活動を続ける企業はありません。発展期に移行するか、失敗して企業が消滅していくかの二者択一しかないのです。ちなみに、創業した状況が長く続く場合もなくはありませんが、それは家業的であって企業の範疇とは言えないでしょう。
【 発展期 】
創生期をうまく乗り切った企業はやがて〈発展期〉へと移行していきます。
発展期では、業績が急展開して企業規模は拡大に向かいます。取引先は増え、社員数も年々増加します。したがって社員の平均年齢は若く、企業は活性化します。その一方、急成長ゆえに企業内ではアンバランスな面を多く抱え込むことになるでしょう。管理者は揃っていないし、社員の質も高くなっていません。売上に対する自己資本比率も低く、設備投資にも十分な費用はつぎ込めない状態です。このような問題を抱えながらも企業の発展は、そのエネルギーによって〈七難〉を隠し、成長していくのです。
やがて、経営陣の強化、権限の委譲、高付加価値商品への転換、長期・短期目標の策定等の経営戦略の転換に成功した企業だけがその業界のシェア・アップを達成し、次なる期へとテイク・オフしていくことになります。
発展期が永続できない理由は、企業の宿命といえます。「全てのマーケットは有限だから」という理由によるものでしょう。今、5億円売上の企業があったとします。
発展期なら毎期50%の成長をすることは可能です。しかし、5年続けば37億円、10年で288億円、15年で2.189億円、20年ではなんと1兆6.626億円にもなってしまうのです。50%成長が20年続くというのは希有の例ですが、発展期が永遠に続かないことの理由がおわかりいただけると思います。
【 成熟期 】
企業はやがて安定成長期へと移行していく。〈成熟期〉である。
成熟期では、売上げの伸びは平均経済成長率程度であるが、確実に増収増益型の企業体制が続きます。社員数も現状維持程度で、設備・資産・資金とも十分な体制になっています。経営陣も安定し、組織は水も漏らさぬ充実ぶりです。企業が最も成果を得るのがこの成熟期であるといえます。
しかし、安定成長ゆえに時間の経過と共に問題が生じてきます。社員の平均年齢と共に、給与水準は上がり、組織は活性化を失ってくるのです。何より、経営陣の高齢化が目立ってきます。商品開発力も以前と比べると低下し、多角化経営、国際企業戦略、分社化などで発展期型の企業体質に戻そうとしますが、多くの企業は衰退期へと落ち込んでしまうのです。
【 衰退期 】
〈衰退期〉では、次々に難問が生じてくる。
業界での競合に勝てず、売上は減少していきます。会社全体に活力は消え、けだるい空気がただよいます。売上減少と共に、利益率は級数的に減少し、ついに毎期赤字の連続という決算状態になってしまいます。遊休設備や不動産の売却、粉飾決算等でカバーできるのは数期のみで、やがて、破産状態にまで転落してしまうケースが多いのです。経営陣も無気力で、なぜ? という問題点は理解していながらも適切な対策も実行できず、凋落の一途をたどります。衰退期が長く続かないのは当たり前、いずれ、再生期に移行するか、消滅への道しか選択肢はありません。
【 再生期 】
>>indexへ戻る
今どこにいるのか、どこへ行こうとしているのか?
MIAでは、チェックリストによって自分の企業が今どの〈期〉にあるのかをまず把握するようになっています。そして、次なる目標の〈期〉の設定するのです。
〈創生期〉にあれば〈発展期〉を、〈発展期〉にあれば〈成熟期〉を、〈成熟期〉にあれば体質を変えて〈再発展期〉に戻ることを目標とします。〈衰退期〉にあればやはり〈再発展期〉に戻り、〈再生期〉にあっても求めるのは〈再発展期〉を目標とします。
理想的な企業パターンは、発展期と成熟期を循環する企業になります。
人間には命という限界があって個人の出来ることは限られています。しかし、企業はこの一人の人間のもつ制約を見事に打ち破っている存在なのです。
言葉を変えて言えば、個人の限界を打ち破るために企業を作っていると言えるのです。「企業で出来ないことはない」、というタイトルでHONDAの企業レポートがありましたが、まさに企業の本質をついた発想だと思います。
企業の資源は「人」「物」「金」とよく言われていますが、これらは社会から必要に応じていくらでも調達することが出来ます。だから、求める企業体質は原則的には、いつでも実現することが出来るといえるでしょう。しかし、現実にはそのように理想通りにはいきません。時に経営者の人智を越えた構造変化が起こってくるからです。
この経営環境の変化に対応できるのが、今まで述べた〈生々流転〉の発想なのです。
以上のような基本的な発想の基にMIAでは、5つの〈期〉のパターンを類型化しています。そのパターンの詳細についてはプログラムを見ていただきたいのです。
常に次なる〈期〉のパターンを先取りしていくことによって、企業目標は明確になり、停滞することなく企業は前進し続けることが出来る、とMIAは考えています。
MIA研究グループで議論した〈生々流転〉についての考え方を以下に列記しておきます。
企業は不明の明日に不安を持つが、目標がしっかりすれば恐怖はなくなる。
企業は空を飛ぶ飛行機だ。常に推進のエネルギーをもたないと墜落する。
飛行機は低空では天候に左右されるが、雲の上に飛び出せば安定飛行が出来る。企業も同じだ。
リーダーシップに絶対的なものはない。企業の状況でワンマンも放任型も必要だ。リーダーシップは「状況が優先する」からである。
創生期には燃えるような情熱、「創業精神」がある。『原点にかえれ』という合言葉はこの精神を取り返せということだ。
同じ業界で成績の良い企業と悪い企業の違いは、社員の平均年齢にあるといデータもある。安定しているときこそ、企業は危機意識を持つべきだ。
一世が二世にバトンタッチするとき、バトンタッチのタイミングは生々流転の中でつかめる。
企業は目標を達成するために存在する。目標が小さければ小さいだけの成果しか手に入りらない。今に満足せず次なる期を目指して目標を高く持ちたい。
価値体系
小野さんがMIAプログラムの第2ステップ、「チェック」段階までしか目を通していないことは前に述べた通りです。それ以降は、小野さんの発想と生前の討論を頼りにプログラムを仕上げましたが、一つ大きな課題が残りました。
それは、「価値体系をつくる」、ということでした。
会議の中でムーチョは言いました。 「誰でもみんな自分なりの価値観を持っているよね。好き嫌い、損得勘定、苦楽などだ。だけど、それらがバラバラでは結局は喜怒哀楽に終わってしまう。行動の結果、どのような状況が生まれても、それを正しく評価できる冷静さがなくてはならない。西田幾多郎という哲学者の歌に〈わが心 深き底あり 喜びも憂いのなみも とどかじとおもふ〉、というのがあるが、まさにそこだ。〈なみ〉には一番表層の〈波〉から、〈浪〉、激しい〈濤〉まであるが、海はもっと深い。われわれも単純に表れてくる表層の価値観だけではなく、深い底までつながっている価値体系を持っていなければならない。つまり、〈Sense Of Value〉から〈Value System〉になっていなければならないんだね」
「だから、企業という視点から見れば〈単発的リーダーシップ型リーダー〉から、〈マネジメント重視型リーダー〉へと変わっていく必要があると思う」
価値体系の確立した小野先輩と直に接していると、この言葉は説得力があり、我々でも良く理解することが出来たのです。実際にMIAプログラムの中でも、目標管理のための〈価値体系表〉を採用してMIAの実践力を高める最も効果的な手法となったのでした。
しかし、この価値体系をどう説明したらよいのか、ディスカッションを十分しないまま小野さんは旅立ってしまったのです。プログラム完成後、あちこちから声がかかり、MIA講座に出掛けたのですが、そこで立ち往生した経験があります。インストラクターとしてこの〈価値体系〉を受講者に十分理解できるように説明できなかったのです。
その後、4年間ほどこの問題を考え続けました。
その結果、優秀マネージャー四つの条件・〈知識〉〈認識〉〈哲学〉〈信念〉という理論を考え出し、これをもって価値体系のプロセスとして説明できるようになりました。
この発想は、優秀マネージャーになるためには、どんな条件があるだろうかと考える中で生まれました。この4つに絞って列記してみると、その一つひとつがコンピュータのプロセスに該当することを発見しました。つまり、〈知識〉はコンピュータでいう〈データカード〉、〈認識〉は〈インプット〉、〈哲学〉は〈プログラミング〉、〈信念〉は〈アウトプット〉となります。コンピュータのシステムは現代社会で最も信頼されているシステムです。このシステムと合致していれば信頼できる考え方だと思いました。それで、この4つの分野を自らチェックし、より強化していくことによって、MIAでいう〈価値体系〉の完成に近づく、と説明できるようになったのです。
MIA テキスト
MIAテキストはページ数が多いので、使い方マニュアルと、6つのステップに分割してあります。
Chart Sheet
MIA専用チャート(PDFファイル)をご用意いたしました。 対応するステップに関しては、MIAスタートのページをご参照ください。
MIA事務局
MIAのお問い合わせはMIA事務局までお願いします。
|サイトマップ|ホーム| M I A概要|M I A Start |リンク | プライバシーポリシー |